運動不足や飲食の過剰摂取は中性脂肪やコレステロールを増加させ、生活習慣病のリスクを高めています。
それは現代病とも呼ばれ、30代といえども他人事ではありません。しかも中性脂肪上昇の原因はそれだけでなく、潜む病気や持病、さらに普段使いの薬にもあるという報告が届きました。
目次
こんな病気が数値を上げる!中性脂肪と病気の関わり
まだ若いし、適度な運動もしているのに中性脂肪の数値が高いのは、なぜ?思いもしない原因が潜んでいるかも知れません。
原因のひとつは病気です。持病がある方はもちろんですが、気づかないうちに進行している病気が引き起こす場合もあります。
糖尿病
血液中のブドウ糖値が高い、つまり血糖値が高くそれを調整する働きのインスリンが枯渇または減少する状態が、糖尿病です。
進行すると血管障害を誘発して、さまざまな合併症を引き起こします。
インスリンの減少で中性脂肪コントロールできなくなる
中性脂肪の増減をコントロールする脂質分解酵素はインスリンによって活性化するため、インスリンが枯渇するとその機能が低下し、中性脂肪値を押し上げることになります。
腎臓病
腎臓は小さな臓器ですが【肝心かなめ=肝腎かなめ】の言葉が示すように、人体にとって重要なはたらきを持っています。
毒素を浄化し、尿として体外に排泄するほか、赤血球の生成を促すなどの機能を持っています。
高い中性脂肪値が腎機能を低下させる
腎臓の機能が低下する原因で特に多いのが、高血圧と糖尿病、そして脂質異常症=高い中性脂肪値です。
腎臓病だから中性脂肪が高いのではなく、高い中性脂肪が腎臓の機能低下を招くのです。
肝臓病
中性脂肪の量は、肝臓がコントロールしています。
摂取する脂肪の量が多い場合や、病気やストレスなどによって機能が低下すると、コントロールする能力が低下します。しだいに血中の中性脂肪値が高くなっていくのです。
中性脂肪がたまって脂肪肝に
処理できない脂肪は肝臓に蓄積し、脂肪肝を引き起こします。
放っておくとさらに重篤な事態、肝硬変・肝がんに進行する可能性が高まります。
黄疸は中性脂肪も関係ある?
脂肪を分解する消化液:胆汁(たんじゅう)は肝臓で作られ、胆管という管を通り十二指腸に排出されます。
その流れが悪くなったり、何らかの理由で管が詰詰まったりして十二指腸まで届かないと、黄疸の症状が現れます。これが閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)と呼ばれるものです。
皮膚や粘膜が黄色いと感じたら、肝臓の異変を疑ってみましょう。中性脂肪値も高くなっているかもしれません。
甲状腺機能低下症
甲状腺は、気管を取り巻くように左右対称に位置しています。主な働きは「甲状腺ホルモン」を分泌することです。このホルモンは、以下のように代謝を調節する役割を果たしています。
- 脳の働きを活発にする
- 体温の調節
- 胃腸・心臓の働きを活発にする
中性脂肪が高いと、甲状腺の機能が正常に働かなくなります。多すぎると頻脈・多汗・暑がり・疲れやすい・体重減少などが起こり、反対に低下すると寒がり・むくみ・食欲低下・体重増加・疲れやすいなどの症状が現れます。
ありがちな症状のため見過ごすことも
これは多くの女性が抱える悩みであり、日常の生活でも認識できる症状なので、本人は病気とは気付かずにいることがあります。
クッシング症候群
クッシング症候群とは、副腎で生成される「コルチゾール」と呼ばれるホルモンが高くなる状態です。
コルチゾールの上昇は、血糖値の上昇や血中脂質の上昇作用にもつながります。いくつかの原因がありますが、大きく3つ挙げられます。
下垂体の異常
下垂体は、脳の一部であり副腎に命令を出している臓器です。
そのため、異常がみられるとコルチゾールの生成に影響が及びます。
副腎の異常
副腎そのものに腫瘍ができるなどで、コルチゾールが勝手に生成されます。
そのため下垂体の指令は弱くなりバランスが崩れます
他の悪性腫瘍
まれな症例として、肺ガンによって生成されたホルモンが下垂体の指令だと判断して、副腎の作用を増幅させてしまうという報告があります。
薬が中性脂肪を上げる可能性も もらっている薬のチェックをしよう
処方された薬の成分を詳しく読み返したことはありますか?服用時間さえ守っていないのに成分まで見るわけがない、という方も多いと思います。
しかし、医師に病状をうまく伝えることができたのか、現在服用中の種類やアレルギーはキチンと話せたか。ここまで来ると気になることばかりです。
以下の項目を参考にして、いただいた薬と処方箋を読む癖をつけてみましょう。
ステロイドホルモン
ステロイドには抗炎症作用と免疫抑制作用があり、アレルギー(例:花粉症)などに効果的です。
また膠原病の症状を抑制する働きも見逃せません。
膠原病とは
膠原病の症状は様々ですが、全身の血管などに炎症の見られる病気の総称として認識されています。若い女性の不明熱(38度以上の高熱が3週間以上続く)として発見されるケースが多いようです。
原因はまだはっきりわかっていませんが、免疫異常や炎症が病気の進行に大きく関わっていると考えられています。
長期間服用で中性脂肪に影響か
ステロイドは一定の効果が認められていますが、長期間服用すると血中のコレステロールや中性脂肪などの数値を押し上げるという反作用があります。
それはステロイドがインスリンの作用を抑え血糖値が高くことが原因で、糖尿病の項目で記述したように中性脂肪値の上昇につながります。
サイアザイド系利尿剤
この利尿剤は腎臓に作用して尿の量を増やす働きを促します。そうすることで手足のむくみを取り除く、血圧を下げる効果につながります。
サイアザイド系利尿剤の副作用はいくつかあげられますが、中性脂肪値と関連するのは血糖値の変化です。
血糖値コントロールが鈍く
利尿を促すことで血中の水分量が減り、血糖値が上昇します。
すると糖尿病や予備軍の人は血糖コントロールが悪くなります。前述のようにインスリンの減少は中性脂肪値上昇につながります。
βブロッカー
これは高血圧・不整脈・心疾患などに用いられることが多い薬です。
臨床で使われることの多い薬ですが、使用には注意が必要です。
合併症に注意
高血圧患者は、糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病を同時に治療している場合が多く見受けられます。
この薬は心臓病に一定の効果がみられますが、腎機能低下作用、中性脂肪増加作用、インスリン分泌を悪化させることなど、合併症につながる危険性があるとの報告があります。
経口避妊薬(ピル)
現在日本で解禁・購入できるものは低用量ピルと呼ばれ、昔のようなホルモンバランスが崩れる、太るなどの副作用を気にせず服用できるものです。
さらに正しく服用することで避妊への不安や、月経による不快感から解放されると言われています。しかし、服用についていくつか注意点が挙げられています。
心身の疾患がある場合はもちろんですが、コレステロール値や中性脂肪、血圧が高い人は服用に注意または医師に相談するようにとされています。
コレステロール値が上昇することは報告があるため、それと関連して中性脂肪が上昇すると心配されているようです。ピルの性格上、長期間にわたり服用することがあると思います。体調と相談しながら服用を心がけたいものです。
向精神薬
統合失調症やうつ病に使われる「向精神薬」の服用は、脂質異常症などの副作用がつながると言われています。
うつ病や不安障害(パニック障害・社交不安障害・全般性不安障害 など)、強迫性障害、PTSDなどの治療は長期間にわたることが多いと思います。その間は、一定量の薬を服用することになります。
長期間の服用で肝腎に負担
それらは肝臓や腎臓をめぐりながら体内に吸収されますが、臓器にとっては大きな負担となって蓄積します。
前述の腎臓や肝臓の項目でお伝えしたような症状につながる可能性があります。
まとめ
ある程度の年齢に達したら、エネルギー(主に食事)の量と質を考えながら摂取する習慣が必要です。
加齢で基礎代謝と新陳代謝は減退していきます。つまり、処理する機能が減るわけです。過信せず毎日のくらし特に食生活を見直しましょう。そんな中で、体調を崩して医師の診察を受けることもあるでしょう。
記述したように医師が処方した薬であっても、思わぬ事態につながる場合があります。だからと言ってネット情報などに頼る素人判断は禁物です。
- 症状やからだの不具合を正確に伝えること
- 正しく服用すること
- 服用して気になることがあれば速やかに相談すること
なんでも相談できる『かかりつけ医師』を持つこともお勧めします。自身では気づかない変化にも迅速に対応してくれるでしょう。